インディーゲームとイベントの話

 大学に入ってからインディーゲームにどっぷり嵌りました。よく「インディーゲーム」という定義について、個人開発者とか大手ゲーム会社とかの間でも論争が起こるみたいなんですが、ここでは「Steamで発売されているような、どこの誰が作ったかも分からないゲーム」と定義します。インディーゲームを好んでプレイする人の中には「誰が作ったか」、つまり開発者やデベロッパーを重視する人もいると思いますが、一般的なゲーマーからしたらそんなのはどうでもいいんです。寧ろインディーゲームそのものを知らない人の方が多い。Minecraftはインディーゲームだけど、そうだと知ってプレイしている人はほとんどいないと思います。最近はPlayStation × Indiesとかファミ通の「とっておきインディー」のお蔭で、誰でも簡単にインディーゲームに手を伸ばせるようになったけど、だからといってわざわざPS4でNidhoggをプレイする人がいるとは思えないんです。元々その存在を知っている人は別として。「よくわからんゲームがある」位にしか思われないでしょう。その「よくわからんゲーム」をここでは「インディーゲーム」として定義することにします。

 

 東京ゲームショウに参加し始めたのは大学生になってからなので、まだ2回しか行ったことがありません。そのうちの1回、大学1年生の時の私はデベロッパーなんて知らなかったので、ゲームショウ内のインディーゲームコーナーはざっと見て回る程度で、「たくさんインディーゲームがあるなあ」とか「外国人が多いなあ」位にしか思っていませんでした。

 そして2回目、TGS2016。この時にはもう立派な「インディーゲームプレイヤー」になっていたので、インディーゲームコーナーへの期待に満ち溢れていました。特に、私が一番好きなデベロッパーが、かなり前からリリースを楽しみにしているゲームを引っ提げてブースを出すと聞いたので、とってもワクワクしていたし、何より応援している一プレイヤーとして開発者と何かお喋り出来たらいいな、とも思っていました。海外のデベロッパーなのですが「Good!」とか、簡単な一言だけでも良いのでコミュニケーションを取りたかった。それくらい楽しみだったので、TGSのサポーターズチケットを使って、一番にインディーゲームコーナーに行こう、目当てのブースに行こうと計画していました。

 サポーターズチケットとは、一般来場者よりも早く入場できる、所謂優先チケットです。優先チケットを駆使して入場したので、会場内はほぼガラガラでした。インディーゲームコーナーに足を踏み入れ、好きなデベロッパーの名前が書かれているブースを見つけた時、ドキドキが止まりませんでした。ここに、あのゲームの開発に携わっている人がいるかもしれないんだ、これがあのデベロッパーなのか、どうしよう、と頭の中はぐちゃぐちゃでした。しかしブースに近付こうとした瞬間、何やら異様な雰囲気が漂ってきて「何かがおかしい」と別の意味でドキドキし始めたんです。

 見えたのは、名刺交換をしたり楽しそうに談笑している関係者たちの姿でした。開発者かどうかは分かりませんが、首から名札のようなものをぶら下げていたので、関係者であることは間違いないです。それを見た瞬間「もしかして場違いかもしれない」と思い、一旦インディーゲームコーナーを後にして、隣のVRコーナーを見て回ることにしました。「早く来過ぎたのかもしれない、まだ準備段階だったのかも」と思っていました。

 12時近くになり、改めて好きなデベロッパーのブースに向かいました。関係者らしき外国人の姿が見えてワクワクしましたが、やっぱり誰かと名刺交換しています。楽しみだったゲームの試遊台は空いていたのでプレイしましたが、操作方法も何もかも分からず、5分程コントローラを弄っていましたが、凄く怖かったし空しい気持ちになってブースを後にしました。私がプレイしている間も、デベロッパーの人は私の後ろで関係者らしき人と談笑を続けていました。楽しみにしているゲームをプレイ出来たのは良いけど、なんだかモヤモヤしていました。

 多分タイミングが悪かったんだと思います。インディーといえど、プレイヤーが開発者陣とお話ししようなんて夢物語、甘い考えだったのかもれません。

 そのままVRコーナーに戻りました。VRコーナーの中でも、壁沿いの狭いスペースで出展しているブースのゲームを中心に見て回ろうという考えでした。企業とか大手のVRコンテンツがホール内の中央あたりに展開されていたのに対し、こちらは小さな机とパイプ椅子が並んでいるという、本当に簡素な作りのブースだったので、多分専門学生とか大学院の生徒さんや小さな会社が作成したVRゲームの展示だったのかもしれません。そしてかなりガラガラ、同ホール内のインディーゲームコーナーや物販コーナーに比べ、ほとんどプレイヤーもいませんでした。しかし、ここのブースの人たちがとっても素晴らしかったんです。

 ブースに近付くと「遊んでいきませんか?」と声を掛けられました。しかしブースに掲げられた「整理券」の文字を見て、「整理券を持っていないので……」と返したところ、「今ガラガラなんで是非遊んで行って下さい、沢山の人に遊んでほしいし感想を聞きたいんです!」と言われて驚きました。上から目線のように思われるかもしれませんが、私が開発者陣に求めていた反応がまさにこれだったのです。プレイし終わった後も、感想だったり、どこが良かったかとか、色々な話をすることが出来ました。「すごく面白かったです!」と伝えた後の「ありがとうございます!」という彼らのキラキラした姿を忘れることが出来ません。

  その日の夜、好きなデベロッパーが大手ゲーム会社の偉い人だったり他の有名ゲームクリエイターとか関係者とのツーショットを上げているツイートを見て、悲しくなりました。プレイヤーと開発者、受け手と作り手の関係はこんなものかと思わされました。

 

 ゲームショウ以外にも、いくつかインディーゲームのイベントに行きましたが、はっきり言ってどれも似たような感じでした。イベントのリピーターとして何回か同じイベントに参加するとスタッフさんは顔を覚えてくれるんですよね。「また来てくれたんですね」と会話は弾むのに、いつも目に入るのは業界人らしき人が名刺交換をしている姿。それを見る度に「怖い」「近付けない」と思うし、自分の場違い感が恥ずかしくなります。実はそのイベント、私が好きな日本のゲームデザイナーが主催していて、彼自身も不定期にイベントに訪れているようでした。運が良ければ会える、という感じです。私は3回行ったのですが、結局姿を拝めず諦めて帰ろうとした瞬間、目の前の扉からそのゲームデザイナーが颯爽と現れてびっくり、頭が真っ白になりました。中学生の時からそのデザイナーの作ったゲームが好きで、言ってしまえばゲームを好きになるきっかけを与えてくれたという「憧れ」の人物だった訳です。しかし彼は、目の前に立ち竦む私には目もくれず、私の後ろのテーブルで談笑していた業界人たちの輪の中に入って行ってしまいました。そりゃそうですよね。でもその時のスルーっぷりがかなりトラウマだし、少し怖かった。

 

 プレイヤーである私にとって、インディーゲームのイベントというものは、作り手と受け手の距離が近いイベントだと思っていました。同じく「インディー」の名がつくものとして「インディーズバンド」が挙げられます。私は中学から高校生の間、いくつかのインディーズバンドを追いかけていましたが、いつもファンとバンドの距離が近く、それがとても心地良かったのを覚えています。「応援してます」、「○○ちゃん、ありがとう!」といった簡単なコミュニケーションですが、ファン、聴き手である私にとってのバンドの存在は大きかったし、バンドにとってのファンの存在も無くてはならないものであるはずだと思うんです。追いかけていたバンドが大きくなり、有名になっていくのを見ると、子を送り出す親の気持ちというか、良かったなあという気持ちになるんです。「わしが育てた」というのとはちょっと違うんですけどね。

 だからインディーゲームとはいっても、作り手にとっての受け手の存在、受け手にとっての作り手の存在というのは何よりも大切なことなのではないでしょうか。ゲームに限らず、どの作品にも重要な関係だと私は思っています。

 

 今年、Tokyo Indie FestとBitSummitに一般参加したかったのですが、「デベロッパー同士で盛り上がっていて近付きにくいブースがあった」とか「アウェイだった」とかいうBitSummit過去参加者のツイートとか意見を見ると萎縮してしまいます。全部が全部そういうブースだとは思っていないけど、ちょっと悲しくなりました。別に名刺交換してようが、自分のゲームを売り込む良い機会であろうが、心に傷を負った私からしたらもうどうでも良いんですが、プレイヤーの存在だけは忘れないで欲しいです。そもそもそういうのはTokyo Indiesとかイベント後の交流会でやったら良いんじゃない? ってちょっとだけ思ってます。開発側ではないので分かりませんが。偉そうでごめんなさい。

 そういうこともあって、Tokyo Indie FestとBitSummitに参加するかは分からない。TGSも行くけど、インディーゲームコーナーは遠くから眺めるだけかもしれない。悲しい思いはしたくない。それだけです。